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最高裁判所第一小法廷 昭和31年(あ)2797号 判決

主文

原判決を破棄する。

本件公訴事実中公職選挙法違反の点(各第一審判決判示第二の事実)につき各被告人を免訴する。

被告人山内安高を懲役八月に、被告人由利直衛、同由利武雄を各懲役一年に処する。

被告人由利直衞に対する第一審における未決勾留日数中三〇日を本刑に算入する。

第一審における訴訟費用中証人中谷実雄、同郡磯吉、同藤崎仲一に支給した分は、被告人由利直衛、同由利武雄の連帯負担とし、証人由利武雄に支給した分は、被告人由利直衛の、証人由利直衛に支給した分は、被告人由利武雄の各負担とし、当審における国選弁護人宮沢邦夫に支給した訴訟費用は被告人由利直衛、同由利武雄両名の負担とする。

理由

被告人山内安高の弁護人島内賀喜太の上告趣意は、事実誤認、量刑不当の主張を出ないものであり、被告人由利直衛、同由利武雄の弁護人藤川儀七郎の上告趣意中判例違反をいう点は、原審で主張、判断のない事項に関するばかりでなく、所論判例は、本刑に適切であるとは認められないから、その前提を欠くものであり、その余は単なる法令違反の主張に帰し、すべて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(そして、投票用紙は所有権の客体となるものであるこというまでもないし、また、被告人由利直衛、同武雄の両名は、権利者を排除して徳島市選挙管理委員会所有の投票用紙を恰も自己の所有物のごとくこれを同用紙として利用する意思であったこと明らかであるから、同被告人等は、不法領得の意思なしというを得ない。)

しかし、職権をもって調査すると、原判決の是認した第一審判決中被告人らに対する各判示第二の所為は、原判決後昭和三一年一二月一九日同年政令三五五号一条一号により大赦があったので、刑訴四一一条五号、四一三条但書、四一四条、四〇四条、三三七条三号により主文一、二項のとおり破棄、免訴し、第一審判決の認定した犯罪事実中大赦にかからない点について法律を適用すると、被告人山内安高の同判示第一の所為は、刑法二五六条一項、六〇条に、被告人由利直衛、同由利武雄の同判示第一の所為は各刑法二三五条、六〇条にそれぞれ該当するから、所定刑期範囲内で主文三項の刑に処すべく、未決勾留日数の算入につき同法二一条、訴訟費用の負担につき刑訴一八一条、一八二条に則り、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 真野毅 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 入江俊郎 裁判官 下飯坂潤夫)

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